女性の農業従事者の尿中ネオニコチノイド系農薬調査2022

top
2023.2.22公開

はじめに

 いま世界には、ネオニコチノイド系農薬の使用禁止を決定したり、その使用規制を検討する議論が行われている国々があります。EUでは、すでに2018年、3成分の屋外使用を禁止を決定しています。2022年には、アメリカ環境保護庁が、絶滅危惧種に影響を与えることがわかったとして、規制に必要な議論を始めるといった報告がされています(リンク)。

 私たちの暮らす日本では、農林水産省の政策として、農林水産業の生産力向上と持続性の両立を掲げた「みどりの食料システム戦略」のなかで、ようやっと削減について触れられるようにはなりましたが、具体的な使用規制などについては、いまのところ示されていません。

 2021年からは、農薬の再評価制度がスタートし、ネオニコチノイド系農薬は優先的に評価作業も進められている段階にあります。しかし、この作業で採用される資料は、農薬製造メーカーの基準で、ランク付けして、提出される資料類も参考にされることから、規制や予防原則的視点で報告されている研究報告などは、参考や採用がされにくいのではないかという指摘もあり、この再評価制度によって日本でネオニコチノイド系農薬の使用が規制される方向に進むかは、まだまだわからない段階です。

 高齢化の進む農村で、大型化と同時に、高い効率化と経済性の達成を社会に求められる日本農業の経営状況をみれば、労力とコストの低減化を実現できるネオニコチノイド系農薬の役割は大きく、それなしでは経営が困難だと考えざる終えない生産者が多くいる状況があります。

 ネオニコチノイド系農薬が人体や環境に与えている可能性があることを報告や指摘している論文などを踏まえれば、消費者だけでなく農業従事者にとっても課題として受け止める必要があるものと考えます。そしてその規制の是非は、食糧供給の仕組みという部分にも目を向けながら、社会全体の議論として、取り組まれる必要性があると考えます。この調査は、ネオニコチノイド系農薬とその暴露についての議論に繋がることを目的におこなったものです。

 ネオニコチノイド系農薬とその類似農薬が、私たちの尿から検出されることは、すでにいくつかの報告で示されています。ただ、農薬を散布する作業にあたる農業従事者について、尿中からの検出状況や暴露状況について調べた日本の研究は少なく実態はよくわかっていません。

 一般社団法人農民連食品分析センターでは、農業に従事する人の農薬の暴露状況はどのようなものかを探るため、2022年、農民連女性部の生産者さんに協力を得て、尿中のネオニコチノイド系農薬について調査をおこないました。このレポートは、提供をいただいた68検体について、LC-MS/MS法によるネオニコチノイド系農薬とその類似農薬が検出されるかどうか調べた結果をまとめたものです。

 この調査は、一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストの研究助成を受けて、実施することができたものです。

検査法について

測定雰囲気 農民連女性部の生産者さんを対象に、こちらから採尿キットを配付し、採尿後に郵送で、お届けいただいた試料を試験に使用しました。

  採取された尿を分析試料として、ミニカラムなどを用いて精製処理をおこなった後、高速液体クロマトグラフタンデム質量分析計を用いた試験法で農薬成分の検出をしました。定性性と定量性を向上するため安定同位体標識付標準品を使用した試験法となっています。 検出された対象農薬成分の濃度は、クレアチニン濃度で補正を行い、補正値を結果としました。(詳細をクリックで続きを表示)

  • 測定装置:島津製作所 超高速トリプル四重極型質量分析計LCMS-8050システム
  • 分離カラム:Kinetex Biphenyl(100 x 2.1mm, 2.6μm)
  • 測定モード:ESI / MRM法による
  • 定性定量:放射性同位体標識付標準品を用いた標準添加法・内部標準法
  • 定量下限:各成分 0.1 ppb
  • データ処理:LCMS SolutionおよびInsight による解析

測定雰囲気 日本農薬工業会の作用機構分類にあるネオニコチノイド系農薬7成分、近年、ネオニコチノイド系農薬に類似した用途や特徴をもつとされる農薬7成分、さらにアセタミプリド代謝物のN-デスメチルアセタミプリドの合計15成分を対象としています。内訳は以下の通りです。

ネオニコチノイド系殺虫剤7剤 ジアミド系殺虫剤1剤
アセタミプリド クロラントラニリプロール
クロチアニジン フェニルピラゾール系殺虫剤2剤
ジノテフラン エチプロール
イミダクロプリド フィプロニル
ニテンピラム フロニカミド系殺虫剤1剤
チアクロプリド フロニカミド
チアメトキサム ブテノライド系殺虫剤1剤
スルホキシイミン系殺虫剤(ネオニコ類似)1剤 フルピラジフロン
スルホキサフロル アセタミプリド代謝物
メソイオン系殺虫剤(ネオニコ類似)1剤 N-デスメチルアセタミプリド
トリフルメゾピリム

尿検体について

graph 女性農業従事者の方67名から合計68検体の尿を提供いただきました。

 尿を提供いただいた方のすんでいる地域分布は表1の通りです。33道府県でした。

 平均年齢は67歳(中央値は69歳)となっていました。もっとも年齢が若い人は、35歳、最も年齢が高い人は、90歳でした。

 農業への従事年数は、平均34年(中央値は35年)でした。最も農業従事年数が長いの人は、70年でした。最も短い人は、5年でした。

 尿提供者の農業経営に従事している人数は、平均3人(中央値は2人)でした。従事人数が最も多い経営をしているのは20人でした。最も人数が小さい経営をしているケースは、1人でした。

 尿提供者の主な耕作種は、野菜の栽培を行っている人が最も多く、27名でした。続いて稲作が20名、果樹18名でした。豆類や麦類、園芸、肉用牛、養豚、その他がそれぞれ1名でした。これは提供者が認識している主な耕作種です。農業経営上、これ以外にも、複数の耕作を行っている場合がほとんどのようで、必ずしも主な耕作種で、最も農薬の使用が多いなどといった条件になるとは限らないと考えられます(例えば、主な耕作種が米、次が果樹であった場合は、農薬の使用量や暴露機会としては、果樹の方が多くなることも考えられるということです)。

graph

分析結果について

 67名から提供をいただいた尿68検体の検査を行ったところ、全ての検体から、対象成分が検出されました。

図1 女性農業従事者の67名、68検体の尿中ネオニコチノイド系農薬分析結果 (μg/g・クレアチニン)

graph

グラフはクリックで拡大します。

表3 提供者ごとの検出値(μg/g・クレアチニン)

尿提供者ID アセタミプリド クロチアニジン ジノテフラン イミダクロプリド ニテンピラム チアクロプリド チアメトキサム スルホキサフロル エチプロール フィプロニル フルピラジフロン トリフルメゾピリム クロラントラニリプロール フロニカミド N-デスメチルアセタミプリド
ABTN067  N.D. 0.5 4.1  N.D.  N.D. 0.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.9  N.D.  N.D.
ABTN068●  N.D. 0.3 0.8  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 2.7  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.3  N.D. 0.5
ABTN069  N.D. 0.3 4.4  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.7
ABTN070  N.D.  N.D. 1.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.8
ABTN071  N.D. 0.1 3.5  N.D.  N.D. 0.9  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN072  N.D.  N.D. 2.8  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN073○  N.D. 0.3 0.8  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 4.9  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 2.6
ABTN074  N.D. 0.2 5.1  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN075●  N.D. 8.4 9.2  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.4  N.D. 0.2
ABTN076●  N.D. 3.5 1.8 0.2  N.D. 0.6  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.2  N.D. 0.1
ABTN077●  N.D. 0.1 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.7
ABTN078  N.D. 0.1 0.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.4  N.D. 1.4
ABTN079  N.D. 0.6 0.6  N.D.  N.D. 1.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.4  N.D.  N.D.
ABTN080  N.D.  N.D. 1.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.4
ABTN081  N.D. 0.2 0.7  N.D.  N.D. 0.2  N.D. 0.4  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.2  N.D. 0.7
ABTN082  N.D.  N.D. 1.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 5.5
ABTN083  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.5  N.D.  N.D.
ABTN084  N.D.  N.D. 0.4  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN085  N.D.  N.D. 0.7  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 2.9
ABTN086●  N.D.  N.D. 0.8  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 17.1
ABTN087  N.D. 0.2 0.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN088  N.D.  N.D. 1.1  N.D.  N.D. 0.2  N.D. 0.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.5
ABTN089  N.D. 0.1 7.4  N.D. 0.5 0.1  N.D. 0.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN090○  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 1.4
ABTN093  N.D. 0.3 1.9  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.8
ABTN094●  N.D. 0.4 2.8  N.D. 0.3 0.2  N.D. 0.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.3  N.D. 0.6
ABTN095● 2.0 0.3 1.8  N.D. 0.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 1.3  N.D. 3.8
ABTN096  N.D.  N.D. 0.3  N.D.  N.D. 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.3
ABTN097●○  N.D. 2.1 2.9  N.D.  N.D. 0.5  N.D. 0.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 1.7
ABTN098  N.D. 0.2 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D.
ABTN099○  N.D.  N.D. 4.7  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 7.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 2.2  N.D.  N.D.
ABTN100  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.6  N.D.
ABTN101●○  N.D.  N.D. 1.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN102  N.D. 0.1 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.7
ABTN103●  N.D. 0.9 7.3  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 43.4
ABTN104●○  N.D. 0.4 0.7  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 5.6  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.4  N.D. 0.3
ABTN105  N.D. 0.4 0.7  N.D. 1.1 0.7  N.D. 2.8  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 1.1  N.D.  N.D.
ABTN106  N.D.  N.D. 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 6.4
ABTN107  N.D.  N.D. 0.6  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.4  N.D.
ABTN109○  N.D. 0.6 4.4  N.D.  N.D. 0.9  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.9
ABTN110  N.D. 0.3 2.9  N.D.  N.D. 0.2  N.D. 0.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.8  N.D. 4.1
ABTN111●  N.D. 0.3 1.1  N.D.  N.D. 0.2  N.D. 0.7  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN112●  N.D. 0.2 5.5  N.D. 0.2 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D.
ABTN113  N.D. 0.3 3.3  N.D. 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.6
ABTN114 0.1 0.1 0.7  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.3  N.D. 1.1
ABTN115○  N.D. 1.0 0.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.3  N.D. 1.1
ABTN115○Re  N.D. 0.7 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.2  N.D. 0.7
ABTN116  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.4  N.D.  N.D.
ABTN117  N.D.  N.D. 0.4  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 4.0
ABTN118●  N.D. 0.2 0.4  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 2.7
ABTN119  N.D. 0.4 2.6  N.D.  N.D. 0.4  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.2  N.D. 0.8
ABTN120  N.D. 0.3 21.7  N.D. 0.1 0.5  N.D. 0.4  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 19.8
ABTN121  N.D.  N.D. 6.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.5
ABTN122  N.D.  N.D. 0.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN123  N.D. 0.1 2.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.5  N.D. 2.3
ABTN125  N.D. 0.2 1.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.3  N.D.  N.D.
ABTN126  N.D. 0.3 0.5  N.D.  N.D. 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.1  N.D. 0.6
ABTN127  N.D.  N.D. 28.9  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.5
ABTN128  N.D. 0.2 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.6  N.D. 0.5
ABTN130  N.D.  N.D. 0.6  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN131●  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 1.6
ABTN132  N.D. 0.5  N.D.  N.D.  N.D. 0.5  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 8.7
ABTN133  N.D. 0.1 0.1  N.D. 0.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.3
ABTN134  N.D. 2.0 0.7  N.D.  N.D. 0.3  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN135  N.D.  N.D. 0.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.
ABTN136  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D. 0.2  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.4
ABTN137○  N.D. 0.1  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.7  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 23.4
ABTN138○  N.D. 0.3 1.0  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D.  N.D. 0.4  N.D. 0.8

表は、↑上下↓左←右→にスクロールできます。
・N.D.は、検出せずをあらわします。(Not Detectedの略)
●付きは、ネオニコ系農薬の散布履歴がある人
○付きは、ネオニコ類似農薬の散布履歴がある人

考察

  • 最も検出率が高かったのはジノテフランで、9割に相当する検体から検出が認められています。ジノテフランは、7成分あるネオニコチノイド系農薬のなかで、日本で最も出荷量が多い成分です。使用の適用がある作物も多いため、さまざまな農産物生産の場面で使用されるという背景があることを踏まえれば、食品や作業環境などから体に摂取される機会もの多いものと想像されます。農民連食品分析センターで2018年に行った市販玄米のネオニコチノイド系農薬残留調査の結果では、ジノテフランの残留は他のネオニコチノイド系農薬成分よりも高い結果が得られていることからも推測されます。ただし、尿からの検出は、体内で対象成分が代謝されやすいかなども影響する(食品や環境からたくさん暴露していても、体内で代謝されやすい特徴を持つ成分は、減ってしまうことになるため、尿を調べても検出されにくくなると言うこと)と考えられるため、これについての判断を行うには、実際に食べた食品についての検査などもセットで行う必要があると言えます。
graph
  • ネオニコ類似農薬として検出対象とした7成分のうち、スルホキサフロル、フロニカミド、フルピラジフロンの3成分で検出が認められました。いずれもネオニコ系農薬の代替薬として普及が進められている成分で、食品の検査でも、近年、検出が増えている傾向があります。スルホキサフロル(スルホキシイミン系)とフルピラジフロン(ブテノライド系)は、IRACの分類では、ネオニコ系に分類されていませんが、作用機構で見ると、ニコチン製性アセチルコリン受容体に作用して、殺虫効果を示す特徴を持っていて、作用機構では同じグループに入ります。どちらも浸透移行性に優れる農薬で、ネオニコ系農薬の使い方と同様の使い方ができる事から、切り替えが進んでいると考えられます。
graph
  • アセタミプリド代謝物にあたるN-デスメチルアセタミプリドが、45人から7割近い人から検出されました。アセタミプリドが検出された人は2人だけだったのに対し、代謝物がこれだけ多くの人から検出されているのは、アセタミプリドの摂取機会は、尿の検出率で示されている結果より多かったのではないかと考えられます。
graph
  • ネオニコ系農薬やその類似農薬を使っている人は22人、使っていない人は42人、回答不明が3人でした。対象の農業従事者のネオニコ系農薬やその類似農薬を使用している人の割合は、もっと高いものと考えていましたが、そうでもないことがわかりました。尿提供者の散布状況については、表4を参考ください(リンク)。
  • 図2に、農作業の際に使用したネオニコ系農薬やネその類似農薬の成分と、尿中に検出された成分がマッチする人のグラフを示しました。ネオニコ系農薬やその類似農薬を使っている履歴がある22人のうち、14人が検出と関係があることわかります。ジノテフランについては、農薬の散布作業などを行うことがあまりない一般の消費者でも、高い検出率であることがわかっています。このため、ジノテフランと尿からの検出関係を考察するには、今回のような調査方法ではなく、より農薬散布作業の前後を押さえた調査を行う必要があるといえそうです。
図2 散布作業地に使用した農薬と検出農薬が一致する人について graph
  • 図3に、果樹や園芸を主耕作としている人と農薬の検出状況の関係を示しました。特に明確な理由はありませんが、便宜的に10 μg/g Creを指標としてみると、10 μg/g Creを越える検出が認められる人は、果樹や園芸に関わる作業に従事する人であることがわかります。果樹の栽培では、高品質な農産物生産を行うため、農薬の使用量や回数が多い傾向があります。そうした背景が影響している可能性があります。
  • いずれの尿提供者も、農薬散布に関わった人は、散布時にマスクや手袋などの防護を行った状態で散布しているとのことです。
図3 10 μg/g Creを越える検出が認められる主な耕作種について graph
  • 農業従事者のほうが農薬散布作業を行う機会があるため、一般の人より尿中濃度が高くなる傾向があるのではないか、といった予測をしたくなるところではありますが、この調査より前に実施した農業従事者ではない人達を対象にした調査で得られた結果と、今回の女性農業従事者の尿で得られた結果を比較すると、単純に農場従事者だから、高い、低いといった明確な検出の差がある、というような判断ができる傾向は見つけるのが難しいようです。この背景には、近年、農家であっても自家用の野菜で食卓を作っている人は多くないという実情があり、食材は一般の消費者と変わらず、最寄りのスーパーなどから購入するなどで、まかなわれているということも関係していると考えられます。こういった点について解析を進めるためには、より被験者や耕作種、散布作業の条件、採尿の条件、複数回、連続での採尿など、より特化した条件を設けた調査が必要かと考えられます。

関連リンク

共同調査レポ:有機食材に切り替えたら尿中ネオニコ系農薬は減るの?実践の結果について

分析センター調査レポ:北海道の農業従事者とその環境にすむ人達の尿中ネオニコ系農薬調査2022

分析センター調査レポ:202検体の尿中ネオニコチノイド系農薬調査2021, 2022

分析センター調査レポ:女性の農業従事者の尿中ネオニコチノイド系農薬調査2022

[ショートレポ]尿中ネオニコ系農薬オープンプレテスト参加者19名の検査結果について

Aya Osaka et al., “Exposure characterization of three major insecticide lines in urine of young children in Japan—neonicotinoids, organophosphates, and pyrethroids,” Environmental Research 147, (2016): 89-96.
(日本の幼児の尿中の3つの主要な殺虫剤系統(ネオニコチノイド、有機リン酸塩、およびピレスロイド)の曝露特性)

Junko Kimura-Kuroda et al., “ENicotine-Like Effects of the Neonicotinoid Insecticides Acetamiprid and Imidacloprid on Cerebellar Neurons from Neonatal Rats,” PLOS ONE, (2012).
(新生児ラットの小脳ニューロンに対するネオニコチノイド系殺虫剤アセタミプリドとイミダクロプリドのニコチン様効果)

Jun Ueyama et al., “Temporal Levels of Urinary Neonicotinoid and Dialkylphosphate Concentrations in Japanese Women Between 1994 and 2011,” Environ. Sci. Technol. (2015), 49, 24, 14522–14528.
(1994年から2011年までの日本人女性における尿中ネオニコチノイドおよびリン酸ジアルキル濃度の時間的レベル)

Kazuhiro Sano1 et al., “TIn utero and Lactational Exposure to Acetamiprid Induces Abnormalities in Socio-Sexual and Anxiety-Related Behaviors of Male Mice,” Front. Neurosci., 03, (2016).
(アセタミプリドへの子宮内および授乳中の曝露は、雄マウスの社会的性的および不安関連行動に異常を誘発する)

ShujiOhno et al., “Quantitative elucidation of maternal-to-fetal transfer of neonicotinoid pesticide clothianidin and its metabolites in mice,” Toxicology Letters 322, (2020): 32-38.
(マウスにおけるネオニコチノイド系農薬クロチアニジンとその代謝物の母体から胎児への移行の定量的解明 )

TBS報道特集:Youtube:ネオニコ系農薬 人への影響は【報道特集】

分析センター調査レポート:市販玄米のネオニコチノイド系農薬残留調査2020

分析センター調査レポート:輸入ワインのネオニコチノイド系農薬など残留調査2018 1st

農林水産省:国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査の結果について

一社)アクト・ビヨンド・トラスト:ネオニコチノイド系農薬残留調査レポート(米・茶)2014

一財)岐阜県公衆衛生検査センター:岐阜県および地下水におけるネオニコチノイド系農薬の調査

PLOS ONE:LC-ESI/MS/MS analysis of neonicotinoids in urine of very low birth weight infants at birth(北海道大学のグループによるネオニコが母体から胎児に移行することを確認した論文)

PLOS ONE:LC-ESI/MS/MS analysis of neonicotinoids in urine of very low birth weight infants at birth(北海道大学のグループによるネオニコが母体から胎児に移行することを確認した論文)

ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議:ミツバチ・生態系・人間 - (PDF)

コープ自然派事業連合:Youtube:米や野菜、果物を「ネオニコフリー」にすることから始めよう

有機農業ニュースクリップ:ネオニコチノイド農薬関連年表(1992~)

わたしも尿の検査をしてみたいのですが、どうすれば良いですか?

DPJ検査申し込みページ この検査は、日本に暮らす人の体からどのような農薬が検出されるかを調べる活動に取り組んでいるデトックス・プロジェクト・ジャパンさんと共同でおこなっているものです。デトックス・プロジェクト・ジャパンさんの申し込みページからお申し込み下さい。

DPJ検査申し込みページ

 ご事情や調査目的などで、デトックス・プロジェクト・ジャパンさんの検査プロジェクトを利用せず、直接での検査を希望される場合の依頼にも対応しております。この場合は、お手数ですが、農民連食品分析センターに直接お問い合わせください(電話03-5926-5131/power8@nouminren.ne.jp)。

農民連食品分析センターについて

分析サポーター会員登録 農民連食品分析センターは、1996年に多くの農業者や消費者の募金により設立された背景を持つ世界的にも珍しい分析施設です。募金による設立のため、企業や行政などの影響を受けることなく、独立した立場で活動を行っています。

 1996年の設立以来、私たちの調査活動は、募金で運営されています。正直なところ、私たちの活動に必要な財政は厳しいところにあります。消費者や農民の立場に立った活動を続けていくためにも、みなさんからの支援が欠かせません。

 分析センターを支援していただく会員「分析センターサポーター会員」の募集をしています。年会費一口5,000円以上で、サポーター会員になることが出来ます。私たちの活動を支えてください。よろしくお願い致します。

分析支援募金と募金分析センターサポーター会員登録のページ