[ショートレポート]にぎり寿司など「サーモン」のネオニコチノイド系農薬残留調査結果2026

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2026.9.16公開
 

この調査について

 2026年9月18日を締め切りに、ネオニコチノイド系農薬「イミダクロプリド」の残留基準値設定について、パブリックコメントの募集が行われています(リンク)

 この作業の中で、注目を集めているのが、魚介類について、新たに設定が検討されている点です。海外では残留基準値が設定されているとして、企業からインポートトレランスの申請があり、「魚介類(さけ目魚類に限る。)」、「魚介類(うなぎ目魚類に限る。」)、「魚介類(すずき目魚類に限る。」)、「魚介類(その他魚類に限る。)」について、0.6 ppmの残留基準値の設定が検討されています。

「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する告示(案)」(農薬等(イミダクロプリド等5品目)の残留基準の改正)に関する御意見の募集について

 さけ目の魚にこういった処理が行われている実態があることに、素直に驚くところではありますが、こうし使用実態にともない、現時点で、実際にサーモンなどからイミダクロプリドが検出されるかどうかについて緊急の調査を実施しました。

 このレポートは、これまでにイミダクロプリドの使用が行われていた実績がある国であるノルウェー産のサーモンと判断できる商品について、ネオニコチノイド系農薬の調査をおこなった結果をまとめたものです。

検査サンプルと検査法について

 2026年9月13日に、産地がノルウェー産のサーモンとして販売されている、生のサーモン、にぎり寿司6製品を購入し、サーモン部分のみを試料としました。これをLC-MS/MS法により、ネオニコチノイド系農薬の検出を行いました。

 検査対象とした成分は、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラム、エチプロール、フィプロニル、フロニカミド、スルホキサフロル、クロラントラニリプロール、トリフルメゾピリム、フルピラジフロン、N-デスメチルアセタミプリド、チアクロプリドアミドの16成分となっています。

 定量下限は、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアメトキサムは、0.005 ppmです。チアクロプリド、エチプロール、フィプロニル、フロニカミド、クロラントラニリプロール、トリフルメゾピリム、フルピラジフロン、N-デスメチルアセタミプリド、チアクロプリドアミドは、0.010 ppmです。

分析結果について

 結果は以下の通りです。今回の調査では、イミダクロプリドほか、いずれも検出は認められませんでした。農薬の検出単位は、ppmです。

表1 ノルウェー産と判断できる生のサーモンおよび
にぎり寿司のサーモン部分のネオニコチノイド系農薬調査結果2026 第一報

No. 試料写真 試料名 販売者・製造者・
加工者など
分析結果(ppm)
S01

サーモン(にぎり寿司ネタ部分)
購入日:2026.9.13

かっぱ寿司鶴ヶ島店 検出せず
S02

サーモン(にぎり寿司ネタ部分)
購入日:2026.9.13

はま寿司鶴ヶ島 検出せず
S03

大とろサーモン(にぎり寿司ネタ部分)
購入日:2026.9.13

はま寿司鶴ヶ島店 検出せず
S04

生サーモン(にぎり寿司ネタ部分)
購入日:2026.9.13

スシロー鶴ヶ島店 検出せず
S05

サーモン(にぎり寿司ネタ部分)
購入日:2026.9.13

スシロー鶴ヶ島店 検出せず
S06

生アトランティックサーモン
購入日:2026.9.13

ヤオコー一本松南店 検出せず

考察

  • 今回の調査では、イミダクロプリドの検出、およびほか15成分についても検出は認められませんでした。
  • さけ目へのイミダクロプリドの使用状況については、業界紙Fishfarmingexpertの記事によると、ノルウェー産のサーモンで、少なくとも2021年から、2024年までの4年間、海面養殖(ケージ)のアトランティックサーモンについて、ウミシラミの感染処理用として利用されていたと解説されています。
  • これはBenchmark社が開発した「Ectosan Vet」という製剤を利用した処理で、海水1Lに対して20 ppmになるように調整された処理液を海上運搬船内の水槽に作成した後、ケージからこの水槽にサーモンを移し入れ、ウミシラミを落とすといったものでした。日本で現在行われているイミダクロプリドの残留基準値の検討に使用されている資料では、「20 ppm溶液に60分間薬浴する。」と記載されています。
  • また、ネオニコチノイド系農薬に対する環境負荷に一定の理解が進んでいる背景があるためか、この処理を行うためには、水槽に作成された処理液を排出する前に、薬剤の残留とシラミの卵をろ過除去する「CleanTreat」と呼ばれる処理とセットで運用することが定められていて薬剤だけの単独使用は行われていないようです。
  • 前出の業界紙によれば、この処理のためのイミダクロプリドは、2021年3252トン、2022年6564トン、2023年6454トン、2024年1587トンと使用されていたことが示されていますが、2025年の実績はゼロトンとなっています。
  • 2025年に、急激に使用が無くなった背景には、この海上処理は、CleanTreatシステムとの併用と合わせるとコストが高くなるという経済的理由があると報道されています。ただし、Evtosan Vetの使用を終了した訳ではなくは、一時休止、ということのようです。Benchmark社は、現在、陸上設置型の簡易システムへの転換を模索中とのことで、条件が整えば、イミダクロプリドによる処理を再開する可能性はあると考えられます(リンク)。こういった動きを踏まえれば、基準値の設定には、食品衛生上、一定意味があるとは言えます。
  • ノルウェー水産研究所(Institute of Marine Research, HI)のレポート(リンク)によれば、養殖魚のモニタリング市場調査の2022年では、118検体中、2検体からイミダクロプリド検出(10 ppb, 13ppb)、2023年の調査では、142検体を調査し、1検体から5.6 ppbの検出があったこと報告しています。この処理によって、イミダクロプリドが市販されるサーモンから検出されることはあることがうかがえます。
  • JECFA(FAO/WHO合同専門家会議)の2024年資料によれば、60分間の薬浴処理後に、15度ぐらいの環境で飼育すると、7日ほど(温度積算日数で98日度に相当)で、筋肉内の残留濃度は71 ppb程度に減少するといった記述があります。(リンク
  • Benchmark社の「Ectosan Vet」による処理は、将来的には、再び行われることが予想されます。また、今回の評価により、「魚介類(さけ目魚類に限る。)」だけでなく、「魚介類(うなぎ目魚類に限る。」)、「魚介類(すずき目魚類に限る。」)、「魚介類(その他魚類に限る。)」にも設定が設けられることがわかります。イミダクロプリドによる処理は、今後、サーモン以外の魚種でも拡大していくことがうかがえることから、今後も、情報を収集しつつ、さけ目を始めとした魚介類全体への検出について、検査の目を向けていきたいと考えています。皆さんからの関連情報などもお寄せいただければと思います。

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