はじめに

　2000年12月におこなった冷凍野菜製品の残留農薬分析結果をもとに、より品目数を増やした調査をおこない、厚生労働省に改善を求めるデータ提供をおこなったときのものです。

• 頻繁に報告される中国産野菜の残留農薬問題をうけ、厚生労働省は2002年1月4日から同年1月31日まで、中国からの輸入生鮮野菜を全ロットモニタリング検査するという命令検査をおこないました。
• これにより生鮮野菜は検査対象となりデータ回収から成果につながると評価されますが、以下にいくつかあげるような調理品、加工品は今回の検査では対象外となってしまいます。
• 以下は厚生労働省がおこなったモニタリング検査期間終了後にあたる2002年2月中旬から下旬にかけ、市販されていた冷凍食品を農民運動全国連合会からの依頼を受け分析をおこなった結果です。
• 試料の入手と分析は2002年2月16日〜3月4日および2月19日〜3月5日。
  

結果

以下に示すように、複数の検体から残留農薬が検出されました。

• 加工品・調理品には厚生労働省の定める残留基準値はありませんが、生鮮ほうれん草で定められている基準値と比較した場合、以下の冷凍ほうれん草で検出されているクロルピリホスの基準値は0.01ppmであり、2検体ともに違反値とみることもできます。同様にNo.2で検出されているフェンバレレートは生鮮のエダマメとしての基準値は0.1ppmであり、この検体は1.41倍の違反品であるというみかたもあります。

補足

• 私たちは、市販される中国産冷凍ほうれん草製品から残留農薬が基準値相当を上回って検出されることを確認し、厚生労働省に数回にわたって、データ提供を行っていましたが、厚生労働省では食品衛生法の解釈上、こうした製品に規制を行わずにいました）冷凍ほうれん草などの食品は加工食品に分類されるため、当時の食品衛生法では、当てはめる基準値がない）。
• 上記の分析結果は、農民運動全国連合会が2002年3月15日、厚生労働省記者クラブで発表、厚生労働省へのデータ提供をおこない、改善を求めています。
• 2001年の野菜輸入量のうち、中国産は149万トンで全体の52％を占めていました。流通される冷凍野菜約９割は輸入品で、その内訳は、中国が63%（約30万トン）を占めています。特にこのシリーズでの調査で違反品の目立つ、冷凍ほうれん草製品は、100％（約5万トン）が中国産でした。冷凍枝豆については6割となっています。
• 私たちの活動をきっかけに、冷凍野菜だけでなく、中国産野菜の残留農薬検査が進み、その危険な実態が明らかにされていきました。やがて、輸入食品の残留農薬の問題へと話題は広がり、今では一般的によく使われる「食の安全安心」というキーワードが生まれるようになりました。
• また、私たちの指摘がきっかけになり、加工食品なら抜け道になる、基準値の存在しない農薬があるなど、食品衛生法の穴の問題に対して、大きな改正が行われるようになりました。従来までのネガティブリスト制度から、180度の方向転換にあたる、ポジティブリスト制度への変わっていくことになりました。
• 食品衛生法は、基本的には食糧供給の根幹は、国内での生産に基づくものとして組み上げられてきたものといえます。現在のような、封を切ったらそのまますぐ食べられるようなレベルの食品がこれほど大量に輸入され、消費されるところを想定できてはいなかったといえます。私たちの食糧共有に対する考え方や経済性ばかり重視する流通の仕組みについても、学ぶ必要がある事件であったと私たちは考えています。
• この立て続けてみつかる残留農薬の実態と、対策の立ち後れが気になる厚生労働省の動きを待っていられないと考え、私たちは、調査の枠を広げることと、厚生労働省を待たずに、直接食品業界にこれら情報が届き、取扱に安全性と制限がかかる方法はないかと模索していきます。

関連データ：

• 冷凍野菜の残留農薬分析1
• 外食店などのほうれん草調理品からの残留農薬分析結果
• 市販の冷凍枝豆・生鮮枝豆および居酒屋・ファミレス・コンビニ・スーパーの枝豆調理品残留農薬分析結果
  
  

より詳しく情報を知りたいときは

　まず以下までお電話をください。

農民連食品分析センター
TEL：03-5926-5131
FAX：03-3959-5660
Email power8@nouminren.ne.jp